第6回研究会

2008年1月29日(火)18時から、大阪大学大学院法学研究科法経総合研究棟4F大会議室にて、「法曹の新しい職域」研究会・中小企業研究会合同研究会が開催されました。参加者は少数だったにも拘わらず、充実した研究会でした。

基調報告者は本学の水島郁子准教授。「中小企業における弁護士ニーズ」についての報告でした。労働法学者の視点から、中小企業における労働法上の問題、とくに非正規労働者の処遇上の問題が深刻であること、それ拘わらず中小企業経営者の間では労働問題が重要な法律問題であるという意識が希薄であり、そのような問題は基本的に社内で解決できると考えられていること、改正パートタイム労働法施行が今年4月に迫るなか、中小企業では労働条件格差についての説明義務を十分に果たせるような用意が行われていないこと、などが指摘されました。このような意識の低さが、中小企業における労働問題に関する弁護士ニーズの低さに表れていると思われます。他方、弁護士の「敷居の高さ」も相変わらず大きな問題であることが浮き彫りにされました。

ディスカッションでは、労働CSR意識がサプライチェーンの下流にある大企業で高まりありつつあるなか、中小企業にも労働CSR徹底の圧力が掛かりはじめており、緊急に労働問題への法的対応を行わないと、多くの企業が窮地に陥りかねないのではないかという指摘や、弁護士への相談結果の満足度が税理士や社労士など他の専門家に比べて低いのは、弁護士の業務が個々の企業向けに十分にカスタマイズされておらず、お仕着せになっている部分があるのではないかといったことが指摘されました。

中小企業の弁護士ニーズについては、さらに研究を進める必要があります。中小企業のニーズにあった弁護士とはどのような存在なのでしょうか。

[福井 康太]