第4回研究会

2006年7月31日(月)18時から、法経総合研究棟4F中会議室にて、「法曹の新しい職域」科研・研究会が開催されました。今回の研究会は、本学特任研究員で、神戸市外大・関西大学非常勤講師の渡邊太さんと、大阪大学・追手門学院大学・武庫川女子大学非常勤講師でNPO recip[地域文化に関する情報とプロジェクト]理事の吉澤弥生さんの報告を手がかりとして、法曹の新しいプロボノ活動の可能性について検討することを目的とする会でした。参加者は少数ながら、社会学者と法学者の興味深いディスカッションが展開されました。

吉澤さんは、行政主導で立ち上げられた大阪市の「新世界アーツパーク事業」を手がかりとして、文化・芸術活動の現場の抱える問題について報告されました。吉澤報告では、文化・芸術活動が、法情報や利益確保手段が不十分なために、行政の気まぐれや経済情勢に翻弄されている現状が明らかにされました。また渡邊さんは、文化・芸術活動や新・新社会運動を、将来に向けられた公共的表現活動として捉え、そのような表現活動の自由を確保するために、(営利活動への)特権ではなく、(多様な表現への)権利がより強く保障されるのでなければならないと提言されました。

文化・芸術活動の現場にあまりにも権利確保に関わる情報や手段がなく、創造された価値が食い物にされてしまう状況は、法曹等の関与によってかなり改善できるはずです。他方、新・新社会運動のように、しばしば違法行為を平気で行うために、法曹としては容認しがたい活動もありますが、新しい時代に向けての様々な表現活動が、単に営利的側面からだけではなく、表現の自由の一環として保障される必要があることも否定できません。文化・芸術活動の現場で創造的価値の確保や表現の自由の確保に関わるのは、むしろ法曹以外の一般市民であるということも言えそうですが、法曹がそこに関わることで、さらに創造活動が充実するということも言えると思います。法曹の新しいプロボノ活動の今後に期待を膨らませています。

[福井 康太]