第2回研究会

2005年10月3日(水)午前10時30分から12時まで、本学法経総合研究棟4F中会議室にて、第2回「法曹の新しい職域」科研・研究会が開催されました。すでに案内しておりますように、報告担当は私で、8月末から9月はじめにかけて行った、オーストラリア・ヴィクトリア州の成年後見制度・財産管理制度調査出張で得られた成果を報告させて頂きました。   報告タイトルは「成年後見・財産管理はビジネスたりうるか−オーストラリア・ヴィクトリア州のState Trustees社の調査報告−」。報告では、まずヴィクトリア州の成年後見・財産管理制度の概要を紹介し、続いてState Trustees社による財産管理業務の内容について紹介し、最後に、以上を前提として、日本ではたして成年後見・財産管理がビジネスたり得るかという問題についての私なりの見解を述べさせて頂きました。

「はたして日本で成年後見・財産管理がビジネスたり得るか」という問いについて結論的なことを述べれば、やはり、わが国のように「信託思想」の基盤がない社会で、成年後見や財産管理を信託銀行や信託会社のビジネスとして認めることは、ややリスキーかなと思います。収益性に重点を置いた財産運用が行われる場合に、「被後見人・被財産管理人の最大利益の実現」が本当に可能かどうかは難しい問題です。また、富裕者層に対象を絞った財産管理ビジネスが広く行われるようになった場合には、多くの一般高齢者の受ける公的サービスの切り下げに繋がらないかという危惧もあります。さらに、財産管理の場合には、信託の場合と異なり、被財産管理人のもとに財産権が留まるわけですが、そうだとすれば被財産管理人の権利を行使するに当たって、弁護士法72条(非弁行為禁止)との抵触が問題にならないかどうかも気になるところです。

いずれにしても課題が山積しているテーマですが、信託法の改正は財産管理ビジネスを許容する方向に向かいつつあります。今後の動きから目が離せません。

                                           

[福井 康太]