イタリアで法曹資格を取得する方法

2006年7月11日(火)16時10分から、法・経総合研究講義棟3階L1教室にて、イタリア・ペルージャ大学のステファノ・ベローモ教授の講演会が開催されました。ベローモ教授はイタリアの労働法学者で司法試験委員を歴任しておられる先生です。本講演会は科研費基盤研究(A)「法曹の新職域グランドデザイン構築」の後援で行われ、講演タイトルは”Access to the Advocate Profession in Italy”(イタリアで法曹資格を取得する方法)でした。ベローモ教授によれば、イタリアでは1999年以来2回も司法試験制度改革が行われたそうです。イタリアでは、1999年以前には、”Vecchio Ordinamento” (Old system, rules, regulation)という制度のもと、学部4年間で法曹教育が行われていましたが、教育すべき内容の増大を受けて、1999年に大きな司法試験改革が行われました。この改革で“Nuovo Ordinamento” (new system, rules, regulation)が導入され、3+2年の法曹教育が行われるようになりました。すなわち、学部で3年間一般的な法学教育を行った後、とくに法曹職に就きたい学生に対してのみさらに2年間の特別な法曹教育を行うという制度です。しかし、この制度の評判は悪く、とりわけ授業を低年次向けと専門教育向けに分けなければならなくなった結果、大学教員の教育負担が極端に大きくなったことが批判されました。この批判を受けて、さらに2005年に法曹教育5年制を原則とする改革が行われたそうです。この改革によって、高度の専門教育を教員の過重な負担なく実現でき、学生の満足度も高くなるというお話しでした。

ディスカッションでは、これだけ頻繁に改革が行われて、学生が不満を持たなかったのかといった質問(当然学生は不満を持っているらしい)、司法のグローバル化にどのように対応しているのかといった質問(イタリアは保守的な伝統があり司法のグローバル化への対応は遅れている)がなされ、少人数ながら質の高いディスカッションが展開されました。

イタリアの法曹養成について話を聞く貴重な機会を与えて下さった、ベローモ教授、また招聘引き受け教員として大変ご苦労いただいた林智良教授に心から感謝致します。

♦ 阪大法学57巻1号掲載 : イタリアにおける弁護士への道 (PDF)