Online Dispute Resolution〜国際電子商取引における消費者救済〜
2005年9月7日(水)14時から15時30分まで、大阪大学大学院法学研究科新棟4F大会議室にて、フランクフルト大学法学部助教授のグラーフ=ペーター・カリエス氏の講演会が行われました。同講演会は大阪大学法学会の主催で、EU科研研究会と「法曹の新しい職域」科研研究会との共催で開催されました。
講演のタイトルは「Online Dispute Resolution:国際電子商取引における消費者救済」でした。まず、ODRの紛争解決制度としての位置づけが明らかにされ、つぎに、オンライン上で生じる紛争、ここではドメイン・ネーム紛争とネット・オークションなどから発生する売主対買主紛争とについて、オンライン上の紛争解決メカニズムがどのように用いられ、どれだけの成果を上げているかが、WIPO仲裁・調停センターおよびSquare Tradeという2つの成功例を通じて明らかにされ、最後にグローバルな消費者電子商取引を支える制度的インフラとしてのODRネットワークの構想が明らかにされました。ODRの成功例は、いずれの場合にも、単にアクセスしやすい迅速かつ実効的な低コストの紛争解決サービスが提供されるだけでなく、紛争解決サービス自体がドメイン登録システムや電子商取引市場を支えるメカニズムにうまく組み込まれているというカリエス氏の指摘は、もっともであると思いました。
ディスカッションでは、トラストマークがどのようにして信用を付与するのか、そもそもマークの付与で消費者保護を図ることは可能なのか、ネット・オークションのようにトリックがまかり通る場で消費者保護を図ることは果たして可能なのかといったことが議論されました。
ODRは恐ろしい勢いで発展しています。多くの研究者はこの展開をフォローするだけで手一杯な状況ですが、それでもなお、この展開を理論的に整理し、ODRの位置づけを明らかにすることは重要です。カリエス氏の研究はまさにこれを試みるものです。氏の研究の今後の展開に期待しています。