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 法曹新職域
グランドデザイン

On the New Field of the Legal Profession

Graduate School of Law and Politics, Osaka University

 ■Osaka University    ■On The New Field of the Legal Profession
 
 
 

Graduate School of the Law and Politics, 
Osaka University

 山形での訪問調査の概要
 2008年2月7日(木)から、10日(日)まで、科研費「法曹の新職域グランドデザイン構築」の研究活動の一環として、山形で訪問調査を行いました。調査地に山形を選んだのは、司法過疎地(この言葉はよくないですが)の弁護士ニーズについて知るには最適の場所だと思ったからです。私(福井)の前任地だったということもあります。調査先については、山形県弁護士会の長岡寿一弁護士に調査のアレンジをして頂きました。おかげさまで、多くの方々から興味深い話をたくさん伺うことができました。長岡先生ご自身からも貴重なお話しを伺うことができ、本当に感謝しております。

 2月8日(金)14時から新庄市・ニューグランドホテルで開催された新庄ひまわり基金法律事務所引継披露祝賀会に参加できたことは、私にとってとりわけ興味深い経験でした。新庄市にはもともと3名しか弁護士がおらず、関係者同士知り合いという場合が多いために弁護士と利害関係問題が生じてしまい、必要なときに弁護士を依頼することができないというような状況でした。そこで、日弁連ひまわり基金が3年前に公設法律事務所を新庄市に設立し、前所長の碓井啓己(ひろき)弁護士が着任されました。そして、公設法律事務所の3年の任期がすぎ、碓井弁護士は大分県で独立開業することになり、後任所長に大阪弁護士会から瀧澤崇弁護士が着任されました。私が参加したのはその引継の祝賀行事でした。3年間に碓井弁護士は約1000件の相談を受け、300件の事件を受任したそうです。このことからだけでも、地方の公設法律事務所の仕事は相当に多忙であることが窺われます。

 瀧澤弁護士は、新庄に赴任してきてすぐに3件もの夜逃げ事件の相談をうけ、びっくりしたそうです。担当する事件はクレサラや破産などが圧倒的に多く(8割以上)、残りの2割が離婚や相続といった通常の「町弁」業務なのだそうです。祝賀会では公設弁護士事務所に関わっている多くの弁護士の方と知り合いになりました。詳細は紹介できませんが、公設法律事務所に赴任する若い弁護士は、大変に意欲的で柔軟な方が多いという印象でした。これは、日弁連が責任をもって厳選した優秀な弁護士を公設法律事務所に送り込んでいるからだと思います。

 公設法律事務所に赴任した弁護士が口を揃えて言うのは、「公設法律事務所は忙しく、小さな事件を多数こなさなければならないが、仕事は充実しており、やりがいはあるので、優秀な若手にどんどん来てもらいたい」ということでした。確かに、本当に必要とされる仕事をするのは、弁護士としてやりがいのあることだと思います。とはいえ、地方への赴任に家族の同意がなかなか得られないことや、同年代の弁護士の相談相手が近くにいないことなど、難しい面もあるようです。これから公設法律事務所の弁護士を目指す優秀な若手が増えるためにはどのような条件整備を進めていけばよいのでしょうか。                                         
                                               [福井康太]